現場から

高騰する食材費 調理現場に悲鳴

2025年1月1日

民医連道央事業協同組合 給食事業部
手稲セントラルキッチン 岡 千陽さん

民医連道央事業協同組合 給食事業部
手稲セントラルキッチン 岡 千陽さん

治療に欠かせない入院給食が物価高騰のあおりを受けています

 ウクライナでの戦争や円安などの国際情勢の影響により、2022年頃から物価が高騰しています。セントラルキッチンとして、道央圏の医療機関や介護事業所に1日約5千食の食事を提供している民医連道央事業協同組合給食事業部(道央事業協)でも食材費値上げの影響が直撃し、その対応に苦慮しています。手稲セントラルキッチンの岡千陽さんが報告します。

 

 食材費の高騰は、調理の現場にも深刻な影響が出ています。帝国データバンクによると、2025年も「値上げラッシュ」再燃の見通しと報道されています。


 欠かすことのできない主食「米」の値上げはとくに深刻です。今年4月から、米の価格がかつてないほど高騰しました。秋には品不足になり、新米が流通しても昨年の2倍の価格になっています。米業者は、来年以降も値上げが続くと予測しています。

 高騰している最大の要因は、米の供給量が少なかったことです。政府がおこなってきた「減反政策」により、農家の平均所得が減り続けました。農家は時給にするとわずか10円といわれています。これでは農業を継ぐ人材がいなくなり、需給の安定化は保てません。


 こうした状況によって、毎月の給食材料費は予算の超過が続き、経営を圧迫しています。私たちが作っている入院給食は、医師の指示に基づき、良好な栄養状態を維持・改善することにより、疾病の治療に貢献することを目的に調整しています。

 高齢者施設に提供している食事は、厚生労働省が示している基準に沿って、低栄養状態やフレイル予防を視野に入れて献立を作成しています。そのため食材が値上がりしても、提供する量を減らしたり、高い食材を使用しないといった対応ができません。

 今、委託・直営といった運営形態を問わず、給食部門は赤字で、現場の管理栄養士は経営と給食の質の維持の狭間で大変な苦慮を強いられています。美味しくて栄養のある食事を提供し続けることが限界にきています。


 値上げ分の食材費を、病院・介護事業所に転嫁できるかといえば、そうもいきません。病院が診療報酬で受け取る入院時食事療養費は1449年から30年間も据え置かれています。給食提供単価を上げれば病院・介護事業所の経営悪化につながります。


 こうした中、私たちは2022年と2023年に「物価高騰に対し、30年間据え置かれている食事療養費の引き上げを患者の負担なしに国に求める」要望書を北海道知事に提出し、道と交渉しています。

 さらに、日本病院会や日本医療法人協会などと一緒に日本栄養士会・日本医療福祉セントラルキッチン協会として賛同し、『病院給食の質を維持するため入院時食事療養費を適正な額に改正するよう政府に求めます』とポスターを掲示し、厚生労働省にも要望書を提出するなど、幅広い団体と運動を広げています。

 国は昨年の6月から、入院時の食事療養の患者負担を一食につき30円引き上げました。しかし、国の負担は据え置かれ、国民だけに負担を押し付けるものです。


 財源不足を理由に国民に負担を押し付けておきながら、2024年度の軍事費は過去最高の8兆9千億円となっています。私たち給食事業部は、幅広い団体や共同組織のみなさんと協力しながら、安心・安全な食事を患者・利用者さんの負担ではなく、「国の責任」で果たさせるとりくみをすすめていきます。国の農業政策にも注目し、全日本民医連とともに、国や自治体へ向けての要求運動などにもとりくむことにしています。


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