現場から

無低利用者訪問でみえた患者の背景

2019年12月12日

北海道保健企画
全職員集会で困窮事例を紹介

事例紹介後のディスカッションで訪問行動の感想を語り合いました

 北海道保健企画は、秋の友の会「拡大強化月間」で無料低額診療を利用している患者さん(27軒)を50人の職員が訪問しました。12月2日にはテレビ会議を含め83人の参加で全職員集会がおこなわれ、6人が事例を報告しました。(渋谷真樹・県連事務局)

 

信頼してもらえる関係性づくりを


 はじめに、北海道の労働と福祉を考える会(労福会)の山内太郎代表が貧困格差・健康問題について講演しました。労福会は1990年から北大生が中心になり、ホームレスの夜回り調査や炊き出し、生活保護申請の同伴などボランティアで支援している団体です。山内さんは、労福会が炊き出しを続けている理由は、空腹を満たして気持ちに余裕を持ってもらうことだけでなく、当事者とコミュニケーションをとり、相談にのりながら必要としていることを掘り起こすねらいがあると話しました。
 また、全国規模のホームレス実態調査から、「全国では公園や河川にテントをつくり暮らしている方が多いが、寒さの厳しい北海道では駅舎や夜間も開いている施設を転々としている方が多いため、みつけることが難しい」など、全国のホームレスとの違いや特徴を紹介しました。
 ホームレスの健康状態について山内さんは、「夜回りで体調を聞くと『なんでもない』『まだ大丈夫』という方が多くいるが、実際には健康に多くの問題を抱えている場合が多い」と指摘。その理由として「どうせ病院に行っても治らない」と諦めている人や、病気は治療したいけれど「他人の施しや生活保護は受けたくない」という人がいることをあげました。
 「病院の無低制度を使って受診することで、医療的なアプローチから生活困難の解消につながる可能性がある」として、「相談・支援活動の課題はまだまだ多いが、信頼してもらえる関係性づくりを大切にしている。活動してくれる仲間を増やしてがんばりたい」と話しました。


無低で支えながら様々な制度の改善へ


 続いて、6人の職員から訪問先の患者さんの状況や気づきが紹介されました。
 建設作業中に大けがをしたが会社が労災申請をせず、腰痛で働けなくなり「依願退職」させられた60代男性の事例を紹介した苫小牧ひまわり薬局の梅下裕也さん(薬剤師)は、「その後労災になったものの症状固定で打ち切りに。責任をとらない企業の姿勢に疑問を感じた。貧困は無低だけでは解決できないことも分かった。国にさまざまな制度の改善を求めていく必要がある」と話しました。
 認知症の妻が施設に入居しているという80代男性を訪ねた新道ひまわり薬局の船場夏子さん(事務)は、男性が慣れない家事に苦労していることや、生活保護を申請したが息子さんがいることを理由に断られたことなどを聞き、「薬局の窓口だけでは分からなかったことが訪問で把握できた。男性は高齢で理解力が低下し残薬も多い。通院している10条クリニックに情報を提供した」と報告しました。
 菊水ひまわり薬局の山田和華さん(薬剤師)は、年金では生活費が足りず働いて補っている70代の独居女性を訪問。医療費の支払いが厳しくなり無低を利用したが「お金を払わずに帰ることに後ろめたさを感じている」と話されたことを紹介。「生きるだけで精一杯になるような年金の制度に疑問を感じた。後ろめたさを感じずに無低などさまざまな制度を利用してもらえるようにとりくむ必要がある」とのべました。
 南区ひまわり薬局からは、「月間」の訪問をきっかけに無低の対象となった事例が報告されました。
 報告者6人によるディスカッションでは、社会保障制度が必要な人に届けられていない現状があらためて語られ、「訪問行動を続けて当事者から話を聞きながら、制度の充実と改善を求めていくことが必要」と確認しあいました。
 事例報告を聞いた労福会の山内代表は、「薬局の職員が訪問活動をしているとは知らず本当に驚いた。生活の様子は実際に見なければ想像することが難しいので、訪問して相手のことを考えられるようになる良いとりくみだと思う」と感想を語りました。

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