現場から

北海道でも外国人の支援を 大学病院、産業医、開業医、そして民医連へ…

2020年1月1日

シリーズ「ひと」 勤医協室蘭診療所 所長 森口英夫さん

 栃木県足利市で開業していた森口英男医師(64歳)は、2018年4月から勤医協室蘭診療所に赴任しました。これまでの活動や今の思いを紹介します。(渋谷真樹・県連事務局)

 

患者の背景をみたい


 森口医師は医大卒業後25年間、大学病院に勤務していました。市民病院でアルバイトをすると、大学病院とは違っていることに気づきます。「次は肺の検査をしましょう。また来てくださいね」と患者さんに言うと、「そんなに何度も来れない。お金がかかる」と言われることがあります。
 「大学病院ではそんなことがなかったので驚きました。患者さんの背景や環境がまったく違うんですね。大学と同じように接していたのでは患者さんがついてこないと思いました」。
 やがて、「大学病院に来ている患者だけが患者ではない。いろいろな患者さんを診たい」と思うようになり、企業の産業医になりました。
 生活習慣病、メンタルヘルス不全の患者さんが多い職場があると何度も現場を訪ね、仲良くなった従業員から問題に感じていることを聞きました。肺がんの発症率が多い現場には分煙室を作らせ、腰痛が多い職場では実際に作業を観察して、改善するよう社長や役員に提案しました。
 「産業医はいい経験でした。その人が置かれた背景、環境をみなければ、なぜ病気になっているかわからないと思いました」。


無保険の外国人を診療


 15年前、足利市内にクリニックを開業すると、保険証もお金もない外国人たちが受診しました。
 日本に不法滞在し、入国管理局に収容された外国人は、国へ帰るための準備期間として仮放免されます。費用などの問題で母国に帰ることができない人たちは、在留資格がないまま日本に滞在することになります。「どこにも就職できず、国保にも入ることができない人たちが外国人のコミュニティの中で助けあって生活しています」。
 足利市は南米からの労働者が多く、重症肺炎やエイズなどの患者を診察しました。お金がなくても診てくれる医師がいるという評判がコミュニティーに広がり、1日数人の外国人が来院し、やがてクリニックの経営を圧迫します。
 そこで、他の医療機関や外国人の支援活動をしているNPO法人の力を借りて診療することにしました。
 「無料低額診療をやっているのは民医連と済生会、社福の病院だけでした。その中でも民医連は入院患者も受け入れ、外国人向けの健診活動もしてくれました。クリニックで困った事があったら民医連にお願いしていて、たいへんお世話になりました」。


室蘭診療所へ


 64歳になり、開業医として働き続けることが難しいと感じて後継者に任せることにしました。業者に就職先の仲介を依頼すると、複数の病院が手をあげました。その中のひとつが北海道民医連でした。
 「民医連は身近に感じていたので、僕でよかったら働かせてほしいとお願いしました。妻も賛成してくれました」。
 嘱託で勤医協室蘭診療所の所長を務めることになりました。栃木との大きな違いは、「在宅の患者さんが少ないこと」といいます。
 「家族の負担を気にして在宅より入院を希望する人もいます。入院病床が少ない足利市では、在宅で看取るしかありません。室蘭は市内に大きな病院が複数あり、入院できる所が比較的多いですね。市民も、『最期は入院で』と希望する方が多く、在宅、施設入所、入院という選択肢があるという点で恵まれていると思います」。


地域の医療を繋いで


 現在は、西胆振地域の医療機関、薬局、介護施設の患者・入居者情報を共有する「スワンネット」というシステムに加入申請をしています。「今は認可を待っています。準備が整ったら連携していきたいですね」。


外国人への支援活動


 「北海道にも農業、漁業の技能実習生など、外国人はたくさんいます」と森口医師。札幌市の通訳団体から、19歳のベトナム人男性がくも膜下出血で倒れたと連絡が入り、すぐに対応したこともありました。
 「診療所で働きながら支援活動ができるのは、民医連だからだと思います。ほかの病院の勤務医だったらできなかったかもしれません。外国人への対応を続けることで、日本人の医療を底上げする力になりたいと考えています」。

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