現場から

やっぱり福祉灯油が必要

2020年2月13日

道民医連 冬季高齢者生活実態調査

 暖冬といわれているこの冬でも北見市の最低気温は氷点下20度を下回り、生きるためには暖房が必要不可欠です。しかし、灯油代をギリギリまで節約している方、石油ストーブが買えず室温16度で暮らしている方がいます。オホーツク勤医協と道南勤医協の事例を紹介します。

 

北見 貯蓄を崩して食費に


 「ストーブが壊れたから買ったのさ。安くしてもらったけど痛い出費だったよ」と、88歳の母親と暮らしている60歳の吉田幸則さん(仮名)は頭を掻きます。
 母親は足腰が弱く、ほとんどの時間を自宅で過ごしています。吉田さんは建設現場でアルバイトをしていましたが、昨年の夏に大ケガをして仕事に復帰できなくなり無収入に。母親の年金月5万3千円が唯一の収入源です。灯油代は月1万2千円以上かかり、水光熱費、医療費を払うだけで年金はなくなります。貯蓄を毎月1万円ずつ切り崩して食費にしています。父親が残した土地や家があるため家賃はかかりませんが、生活保護制度の利用は難しいといいます。畑で玉ねぎを育て、近所の人から野菜を分けてもらっていますが、暮らしは厳しいといいます。
 母親は「スーパーに行くと、カートいっぱいに買っている人がいる。私たちはとてもそんなことできないわ」といいます。吉田さんは、「病気になったりケガをして、あっという間に生活が苦しくなってしまった。どうしたらいいもんかね」と肩を落とします。
 起床とともに暖房をつけ、部屋に日光がさす10時から日没まで暖房を止めて、夜7時前に布団に入って暖房費を節約しています。
 北見市は「冬季福祉灯油」は実施されません。「冬は灯油代がかかるから、もし助成制度があったら助かるのに」と吉田さんはいいます。
 社保委員として今回の調査に関わっている渋谷睦美さん(医事課)は、「吉田さんは無低を利用していますが、それだけでは不十分だと感じました。貯蓄が尽きるのは時間の問題です。以前は北見市にも福祉灯油制度がありましたが、2013年度以降、実施されていません。冬の生活を支えるために必要です。再開を求めていきたい」と話します。


ストーブ買えず 室温16度


 公営住宅に母親と二人暮らしをしている塩谷守さん(61歳・仮名)は、小さな電気温風器1台で暖をとっています。室温は16度。母親は布団に入り、塩谷さんは防寒着を羽織って過ごしています。2人とも身体が不自由なため調理が難しく、どうしても食費がかさみます。生活保護費でやりくりしていますが貯金ができず、灯油ストーブが買えません。
 生活保護世帯には、冬季加算の特別基準で暖房器具の購入費として5万円を上限に支給されますが、生活保護開始時や、転居先に暖房器具がないときなどに限られているため、暖房が壊れたときは生活費を切り詰めて購入しなければなりません。「灯油ストーブを買いたいけれど、食費を削るしかない。防寒着も古くなり購入したいが余裕ない」と塩谷さんは話します。
 ヘルパーステーションたんぽぽ所長の北村五月さんは、「2015年に生活保護の冬季加算が削減されて、食費や光熱費にあたる生活扶助費も段階的に削減されました。さらに消費税増税が生活を圧迫しています。いまの生活保護基準は、『最低限度の生活』ができる基準ではないと思います」と話します。


道南 布団をかぶって節約


 函館市内の市営住宅に一人で住む75歳の田中恵子さん(仮名)は、月8万5千円の年金で暮らしています。一昨年に息子と弟をあいついで亡くし、老後のために取っておいた貯蓄を葬儀費用として使いました。
 函館市にも福祉灯油制度がありません。田中さんは灯油代を切り詰めるために、朝6時の起床とともにストーブをつけ、夕方5時には消して布団の中で過ごします。湯船にお湯をためると灯油代がかかるので、シャワーを浴びるだけでがまんしています。「それでも月5、6千円ぐらいになる。ギリギリで生活しているが、節約するにはさらに食費を削るしかない」と話します。生活に余裕がなく、近所づきあいはほとんどできません。市営住宅に住んでいても孤立しがちです。
 職員とともに訪問した友の会の舩木幸子さんは、「経済的に困難な高齢者が増え、心配になるくらい灯油代を節約しています。ここ数年、灯油の値段が高くなっています。函館市でも福祉灯油を実施してほしい」と話します。

 


福祉灯油制度
 各市町村が主体となり、低所得の高齢者や障害者、ひとり親家庭などに暖房費などを援助する制度。現金で支給したり灯油券で支給するなど、支給方法や金額、対象者はさまざま。各自治体では灯油の値段が安い場合は実施しない年もあります。この間、灯油代の高騰で昨年は道内の8割の自治体が実施しています。

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