現場から

「よりみち」で見つけた 連携への「近道」

2026年4月9日

道東勤医協 釧路協立病院 医局カフェ

道東勤医協 釧路協立病院 医局カフェ

 道東勤医協・釧路協立病院のリハビリ室に、ふわりとコーヒーの香りが漂います。2ヵ月に1度、17時半に開催される医局カフェ「よりみち」は、忙しさに追われるスタッフが日々感じていることを言語化し、一息つくための大切な「止まり木」になっています。3月26日に行われた第3回カフェには、職種の垣根を越えて28人が集まり、楽しく交流しました。(渋谷真樹・県連事務局)


バリスタ医師が演出する休息時間

 「今日はグアテマラ産の豆のブレンドです。香りが漂うだけで、業務から離れた休息の雰囲気が作れます」。慣れた手つきでコーヒーを淹れるのは、渡邊由桂医師。バリスタ資格を持ち、カフェ勤務の経験もある本格派です。愛用のコーヒープレスで丁寧に淹れられた一杯は、豆の油分が醸し出す重厚なコクが特徴。その香りに誘われ、次々と職員が顔を見せます。あたたかい飲み物を手に緊張を解きほぐし、「一人の人間」として向き合うためのスイッチになっています。


「ケアの倫理」から働く環境を語る場へ

 きっかけは、昨年の医局会議でした。「ケアの倫理」をテーマに議論する中で、「医師だけで議論していても、普段直接ケアに関わる職員の思いは見えてこない」と澁谷仁美医師。現場の苦悩や喜びを直接聞いて対話したい。そんな願いから、昨年11月に初のカフェが実現しました。

 参加へのハードルを下げる工夫も。「今困っていること」「こうありたいと思っていること」など、話しやすいお題カードを用意しました。また、藤田優貴子医師の発案で、おしゃべりが苦手な人も安心して同席できる「聞くだけプレート」を導入。「聞くだけのつもりだったけれど、みんなの話を聞いていたら話したくなった」と、本音を語り出す職員もいます。

 カフェでは、普段の業務では見えにくい「情報の循環」が起きています。 ある訪問看護師は、退院後の患者さんが自宅で元気に過ごしている姿を報告。それを受けた病棟看護師は「自分たちのケアは無駄じゃなかった」と表情を緩めました。

 また、意思伝達装置とスマートスピーカーを活用して音楽を楽しめるようになった四肢麻痺の患者さんの事例や、認知症患者さんとの向き合い方、新入職員の教育の仕方など、現場のリアルな知恵や悩みが共有されました。


部署の垣根を越え未来を語る場へ

 仕事だけでなく、プライベートや個性が垣間見えるのもカフェの醍醐味です。「待望の女の子が産まれた」と報告した職員には、お祝いの拍手が送られました。「将来娘に嫌われたくない」という新米パパの悩みに対し、先輩パパからは「娘の母親、つまり妻との信頼関係を築くことが良い父親像の近道」という実感をともなったアドバイスが飛び出しました。また、普段はクールに見える職員が「患者中心の医療」について熱い思いを吐露する場面もあり、そのギャップに驚きと称賛が寄せられました。

 さらに、新病院の建て替えに向けて、「夕日が綺麗なので、景色が一望できる食堂やお風呂がほしい」「建設予定地にある桜を残してほしい」といった願いやアイデアも寄せ合いました。


対話でお互いを知り風通しの良い職場へ

 初めて参加した老健施設ケアコートひまわりの職員は、「少し敷居が高いと感じていましたが、入ってみればすごく良い雰囲気。次は仲間を誘って来たい」と笑顔を見せました。孤軍奮闘しがちな医療・介護の現場。しかし、コーヒーを片手に部署を越えてつながることで、職場の風通しは確実に良くなっています。

 「実際に顔を合わせ、様々な話題を共有することで以前よりもその人と話しやすくなり、職場での連携がスムーズになりました。今ある課題を共有できることにも大きな意味があります」と、渡邊医師は手応えを感じています。コーヒーの香る「よりみち」は、働く環境に気づき、コミュニケーションを活発にする豊かな潤滑油となっています。


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