ムーヴメント
憲法25条を生活の隅々に
国の責任で医療と介護の充実を求める北海道集会 当事者がいのちの危機を告発
国の責任で医療と介護の充実を求める北海道集会 当事者がいのちの危機を告発
「2017国の責任で医療と介護の充実を求める北海道集会」が12日に札幌市内で開催され、200人が集いました。2回目の今回は北海道民医連や北海道社保協などに北海道難病連も加わって21団体による実行委員会となりました。4人のシンポジストから、地域医療の実態、難病患者や家族の切実な思いとともに、セーフティーネットづくりの必要性、国や自治体への改善を求める運動が呼びかけられました。集会には来賓として池田まき衆議院議員、日本共産党の畠山和也さんが駆けつけました。
基調報告した太田美季実行委員長(道民医連事務局長)は、北海道の地域医療構想について「2025年の必要病床数は、2014年の医療施設調査と比べて約9500床も少なくなると推計されているが、高齢者人口は増えるため病床確保は切実」と指摘。2015年に稼働している病床数に比べて1900床しか減らないので実態と変わらないとする説明に対して、「医師・看護師不足などにより稼働できない病床が考慮されていない。そのデータを前提に未来を推計することには納得できない」と批判しました。
また、介護保険制度が繰り返し改悪され、要介護3以上でなければ介護保険サービスをまともに使うことができなくなることを紹介。「このままでは多くの方が必要な介護を受けられなくなってしまい、介護保険制度が開始されたときに懸念された『保険あって介護なし』という事態が進行している」と。また、「広域で積雪があり、交通の便に問題がある地域の特性が考慮されなければ、北海道には住み続けられなくなってしまう。当事者の思いを共有し、憲法25条を生活の隅々まで広げていこう」と呼びかけました。
地域医療構想の問題点を指摘
シンポジウムで、医師の立場から発言した堺慎さん(北海道民医連会長)は、「かつて健保本人の自己負担は無料だったのに、今は3割にされてしまった。働く人が安心して治療を受けることが難しくなっている」と、自公政権下での医療改悪を紹介。「ほとんどの病院が赤字で、この状態が続けば大変な事態になる」と訴えました。
また、全日本民医連でとりくんでいる経済的事由による手遅れ死亡事例調査を紹介し、「公共の福祉、社会保障制度は国の責任で担保されるべきだ」と語りました。
介護現場で働く職員の立場から発言した村山文彦さん(北海道介護支援専門員協会会長)は、ケアマネジャーの有資格者3万4000人のうち、実務者が1万2000人しかいない実態を紹介。「地方では募集をかけても集まらない。介護福祉士がケアマネの資格をもつ人が多く、ケアマネ業務に専念すると介護従事者が減ることになる」などの問題点を指摘。「具体的にケアマネを増やす計画を立て、適正に配置することが必要」と訴えました。
「黙っていたら何も変わらない」
患者・利用者の立場から発言した深瀬和文さん(日本ALS協会理事・北海道支部支部長)は、自身が抱えている筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状や介護サービスについて、介護者を通じて説明しました。
深瀬さんは、介護保険サービス、障害福祉サービス、札幌市独自でおこなっているパーソナルアシスタンス制度を活用して生活していますが、その基盤をつくるまでに自ら何度も区役所と交渉しなければならなかったことを紹介。「どんな制度が利用できるのかもわからなかった。黙っていては何も動かないと実感した」と語りました。また、喀痰吸引ができるヘルパーが少ないため、ALS協会として独自に研修会を全道で開催したことを紹介。「本来は国や道が研修体制の拡充に予算をつけるべきだ」と訴え、ALSの原因究明と治療法の確立のための研究推進、喀痰吸引の研修制度やコミュニケーション支援施策の拡充、ヘルパー不足解消のため実態に見合った報酬の評価・改定を求めました。
山下克明さん(北海道難病連・中空知支部準備会代表)は、地域医療の実態について発言。13歳で潰瘍性大腸炎を発症し、北海道難病連の活動に参加してきた経過と、広大な北海道で専門病院に通院する困難を強調し、難病連の地方支部組織の連携と情報共有を強めていきたいと語りました。
障害者の助成拡充を
フロアからは3人が発言。プラダー・ウィリー症候群の子どもをもつ母親は、病気の症状と療養上の課題を語りました。障害者の男性は、災害時の福祉避難所が周知されていない問題を指摘しました。精神障害者を支援する会のスタッフは、「精神障害者は、身体障害者、知的障害者と比べて支援制度などに不利益があり、差別されている」と指摘。精神障害者への助成拡大を求めました。
改善求め大運動を
進行の近藤良明さん(北海道民医連)は、道議会では診療報酬を引き下げず地域医療を守る決議を全会一致で可決したことや、介護労働者の待遇改善を求める意見書が採択されている地方議会のあらたな動きを紹介。「困難を抱える地域のセーフティーネットが必要。みなさんと手をつないで、国に向けて改善を求めるとりくみが大切」と大きな運動を呼びかけました。
参加者から「家族が認知症になったが、どんな制度が利用できるのかわからないことばかり。相談所が必要と実感した」などの感想が寄せられました。