ムーヴメント

もっと早く受診していたら

2018年7月12日

手遅れ死ゼロの社会へ
道民医連が記者発表

左から古田課長、小市会長、太田事務局長=2018年7月3日、北海道庁内の記者クラブ

 北海道民医連は3日、道政記者クラブで「2017年経済的事由による手遅れ死亡事例調査」の結果報告をおこない、手遅れ死を繰り返さないために、社会保障の解体政策に反対し、社会保障制度の充実を求めました。


 「国民皆保険といわれながら、経済的な困難のために医療を受けられず、尊い命を落とす事例があとを絶ちません。また、本来ならば生活保護に該当するにも関わらず、さまざまな理由で生活保護が受けられず、困窮する中で受診を控えて手遅れになるという事例も毎年発生しています。お金のあるなしによって、いのちに格差が持ち込まれることがあってはなりません」
太田美季事務局長は記者発表の冒頭、怒りを込めて訴えました。
 2017年の調査では死亡事例63件のうち、男性が8割、年齢は50~70代が8割。雇用形態は無職や非正規雇用が約7割。無保険や資格者証の方だけでなく、正規の保険証を持っていても受診できずに亡くなっている人が約半数いたと調査の概要を報告しました。
 続いて、道内で発生した3件の事例について古田陽介勤医協中央病院医療福祉課課長が報告しました。

 

外来で意識失い 40日後に死亡
無保険・40代・男性
 トラック運転手をしていたAさんは事故を起こし退職して以来、無職になりました。しばらくは貯蓄や失業保険で過ごしていましたが生活費がつき、路上で生活。ホームレス支援団体につながった際に生活保護を申請しましたが、「若いからまだ働ける」と言われ、申請書も渡されず受け付けてもらえませんでした。知人宅に身を寄せていたAさんは昨年5月にインフルエンザの症状で勤医協の病院を受診したところ、外来診療中に意識を失い、そのままICUに緊急入院。病院は国民健康保険と生活保護申請をおこない、保護決定となりました。
 インフルエンザ性の肝・腎障害と診断され治療しましたが、受診から40日後に亡くなりました。
 病院まで連れ添った知人は「『生活保護の申請はしたくない。保険もお金もないので病院に行けない』と通院を躊躇っていた。もう少し早く病院に来ていれば…」と悔やんでいました。

 

妻が認知症 経済的に困窮
60代・男性
 認知症の妻の介護をしているBさんは、月15万円の年金で暮らしていました。妻は重い認知症で、年金をすぐに使い果たすため、困窮状態に陥りました。地域包括支援センター、区の保健師が定期的に訪問して見守っていましたが、ある日、包括の担当者が訪問すると、Bさんは居間で動けなくなっていました。
 勤医協の病院に即日入院し、検査の結果、末期の大腸がんと診断されました。Bさんは国保料を滞納し、窓口での負担金も払えません。無低制度を活用しながら生活保護を申請し、受理されました。医療費の心配がなくなったBさんは病院のソーシャルワーカーに「もっと早く病院に来ていれば違ったんだね」と言いました。Bさんは入院から2ヵ月後に亡くなりました。

 

健診で肺に影 家の中で動けず
60代・男性
 一人暮らしをしていたCさんは2016年、町民検診で肺に異常影があると指摘されました。包括支援センターの担当者が何度も受診をすすめましたが、病院には行こうとしません。金銭面の困難があることを察した包括センターの担当者が無低制度を実施している勤医協の診療所に相談。診療所はCさんとつながり訪問することになりました。しかしその前日、町内の商店から包括に、「久しぶりに買い物に来たCさんの顔色が悪い」と連絡が入り、訪問すると動けなくなっていました。
 救急搬送された勤医協の病院で検査を受け、末期肺がん、脳梗塞、認知機能低下と診断。今後の治療方針を本人に確認したところ、積極的な治療の希望がなかったことから、緩和ケアとなりました。症状は急速に進行し、転院から約1ヵ月後に亡くなりました。


誰もが必要な医療を
 古田課長は、高すぎる国民保険料や窓口負担の一方で、低賃金、低すぎる年金額によって多くの人たちが医療から遠ざけられている実態を指摘。「困窮時の連絡先や無低制度が広く周知されれば、もっと早く医療につながり、手遅れになる前に命を救うことができたのではないか」と話しました。
 小市健一道民医連会長は、「お金がないため病院にかかれず手遅れになる残念な事態が続き、ご本人やご家族の気持ちを考えると心が痛みます。私は医師として毎年このような報告をしなければならないことに憤りを禁じえません」とのべ、こうした背景について、「『国民皆保険』が空洞化し、生存権・健康権が切り崩されています。公的医療制度をしっかり機能させ、本人や家族、まわりの人からのSOSに速やかに対応できるとりくみが必要」と訴えました。
 さらに、安倍内閣がすすめる「骨太方針」「税と社会保障の一体改革」による社会保障の解体政策を批判し、誰もが必要な医療介護を安心して受けられる社会保障制度の確立を呼びかけました。

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