ムーヴメント

福祉力ある地域へ

2018年8月30日

声かけあって24年
高齢者アンケートに9割が回答
苫小牧 山手北光町内会

左から、畠山さん、髙橋さん、畠山忠弘さん、結城さん、大西さん、伊藤さん。「議論ばかりしていると簡単なことも難しく感じることがあります。まずは動いてみてから考えるといいですよ」と髙橋さん。

苫小牧市の山手北光町内会は昨年夏、70歳以上の高齢者203人を訪問して独自のアンケート調査を実施しました。プライバシーに踏み込んだ設問にもかかわらず、なんと9割に迫る181人が回答し、住民の悩みなどが明らかになりました。なぜこれほど多くの人が答えてくれたのか、それには大きな理由がありました。(渋谷真樹・県連事務局)

 

 アンケートを始めたのは昨年、北海道町内会連合会が全道の町内会に呼びかけた「ひとりの不幸も見逃さない事業」がきっかけです。山手北光町内会福祉部副部長の大西茂之さん(60)は、「問題が起きたときに対応することも大切ですが、問題が起きないように、地域の人の状況や要求を知り、共通の認識をもつ必要があると考えました。独自にアンケートを作り、11人の福祉部員が高齢者を一軒一軒訪問して聞き取りました」と話します。
 名前を記入し、 病気やかかりつけの病院、医療費、介助の必要性など、他人には知られたくない設問が27もあります。「そんなこと誰も答えてくれないと方々から言われましたが、みんな答えてくれました。これまで町内会が長年にわたって積み重ねてきた努力をみて信頼してくれたのだと思います」と、大西さんは笑顔をみせます。


顔が見える関係づくり
 1970年代、苫小牧市には多くの若者が仕事を求めて集まり、山手北光町内会の地域は王子製紙で働く人たちが多く住んでいました。時が流れ、その若者たちが高齢者になりました。「外に出かける人が少なくなり、隣近所との付き合いも少なくなった。なんとかしたいと考えていました」と、町内会長の結城正敏さん(91)は振り返ります。
 厚生省で介護保険制度導入の検討が開始された1994年、地域の高齢化に不安を感じた町内会の役員たちは、70歳以上の高齢者の自宅を訪ねて「元気かい?今日は暑いね」と声をかけながら弁当や手作りのおはぎを配る活動をはじめました。その後は月一度、200円で食事する地域サロンを開きました。こうして24年もの間、地域の人と顔が見える関係づくりを続けてきたのです。
 町内会副会長の髙橋雅子さん(81)は、「いきなりアンケートをしても見ず知らずの人には答えてくれません。ずっと顔をあわせてきたから答えてくれたのだと思います」と目を細めます。


女性は苦労している
 アンケートの回答から、地域の人々の深刻な状況が明らかになりました。問題のひとつは高齢化です。山手北光地域に住む70歳以上の夫婦と一人暮らし世帯は64%で、9割が病気を抱えています。一人暮らしの7割は女性で、整形疾患が多いことがわかりました。もうひとつは交通の便の悪さです。「公営バスが機能していない」「車がなければ買い物できない」という声が多く寄せられました。
 高齢の夫婦世帯では、女性が非常に苦労していることもわかりました。「具合が悪いけれど夫を家に残して通院できない」「夫が通院している。私も通いたいがお金がかかるから我慢している」「具合が悪くて休みたいときも『おいメシ!』といわれ腹が立つ」などの本音を聞きました。
 「みんな複雑な感情を抱えています。一人暮らしの女性は年金が少なく、介護施設にも入れない。こうした問題は決して他人事ではありません」と髙橋さん。


「私の将来のことだ」
 福祉部部長の伊藤洋子さん(70)はアンケートの回答に、「これは自分の将来のことだ」と気づいたといいます。「歩けなくなり一人になったときにどうなるのかを想像することができました」。福祉部副部長の畠山瑞枝さん(77)は、「若い人が少なく、面倒をみてくれる人がいない。面倒をみられる側が面倒をみている状態。どうなってしまうのかと心配です」と話します。


友の会の枠を越えて
 山手北光町内会の会長、副会長と福祉部員は全員、苫小牧健康友の会員です。しかし、そのことを意識せずに町内会に関わっているといいます。髙橋さんは、「世の中を良くするためには町内会も友の会も線引きせず、みんなで重なり合い、混じり合いながらやっていく必要があると思います」と話します。
 山手北光町内会のとりくみは、社会福祉協議会や地域包括支援センターにも共有され、近隣の町内会から問い合わせがあるなど広がりはじめています。大西さんは、「地域の問題がいっぺんに解決する方法はありませんが、アンケートで明らかにした問題を放置せずに受け止めてくれる人たちがいることが一番の強みになります。『おせっかいな人』を広げていくことが大切ではないでしょうか」と問いかけます。結城会長は、「みんなのことを信じて、何かをやるとなったら声をかけあうことが大切ですね。見守り活動をこれからも続けていきたい」と語ります。

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