ムーヴメント

「貧困の連鎖」断ち切りたい

2018年11月22日

北海道民医連奨学生合宿
子どもの貧困を学び考える

北海道民医連奨学生合宿
子どもの貧困を学び考える

「子どもレストラン」を始める木村さん(左から2人目)

 2018年11月10~11日、北海道民医連奨学生合宿が札幌市と江別市でおこなわれ、9人の医学生が参加しました。貧困状態にある子どもと家族が置かれている実態を知り、自分たちにできることを考えようと、医学生も企画に関わりました。産婦人科の医師と、子どもレストランをはじめるNPO法人の代表からお話を聞き、将来の医師像などについて考えました。(渋谷真樹・県連事務局)


困難事例から考える


 はじめに「貧困の連鎖」について、勤医協札幌病院産婦人科の西岡利泰医師が講演しました。
 初診時にはパートナーとは別れていて、「子どもを産んでも育てるつもりはない」というものの、すでに中絶できない時期になっているケースや、夫の暴力から逃げるように病院へ駆け込んで出産したが、生活基盤が整わず子どもを児童福祉施設に預けた事例を紹介。特別養子縁組や入院助産制度、児童相談所の役割、中絶・出産にかかる費用などの問題点を話しました。
 参加者は初めて聞く深刻な事例に驚きの表情で聞き、「困難を抱えている人が定期的に来院してもらうためにはどうしたらいいか」「養子に出された子どもは幸せになっているのか」など次々に質問しました。西岡医師はそれぞれの質問についてみんなで考えるよう促しながら、お腹の赤ちゃんの安全性を母親に説明していることや、養子には収入や子育ての能力がチェックされてから引き渡されることなどを説明しました。
 講演を受けて、参加者同士での話し合いでは、「貧困を個人の問題にせず、学校で救済制度を学べることができればいいと思った」「親が余裕のない状況では、子どもは親に相談しづらい。家族以外に相談できる場が求められている」「無理をして家族や親戚の中で解決しようとしても貧困の連鎖を断ち切るのは難しい。第三者の援助が必要ではないか」などの意見を出し合って講演の内容を深めました。


食育するレストラン


 つづいて、札幌市東区で11月下旬のオープンをめざして準備がすすめられている「子どもレストラン・リトルディッパー」に行き、NPO法人「みんなで一緒に」理事長の木村鉄宣さんから話を聞きました。
 木村さんはかつて勤医協で働いていたこともある皮膚科の医師です。貧困や社会保障制度などの問題に関心をもち、自分に何ができるのかを考えていたという木村さんは、食育する「子どもレストラン」をやろうと立ち上がりました。資金はスポンサーから寄付金を募るなどして、年中無休で、子どもに無料で食事を提供するレストランをめざし、これまで築いてきた人脈や経験を活かして着々と準備をすすめています。
 「『子ども食堂』にすると、そこに通う子は貧乏と思われてしまうかもしれない。経済的に豊かな家庭に育っていも食事が満たされない子どもは多い。そこで、料理ができる子どもを育てよう、世代を超えて交流しながら『食育』するレストランを開こうと考えました。美味しいものを食べたら元気になれるじゃないですか」と、木村さんは医学生たちに夢や今後の展望を熱く語りました。また、「今は、腕がよく優しい医師になれるよう、しっかりと勉強してください」と、先輩医師としてエールを送りました。
 その後のディスカッションで感想を話し合いました。「木村先生のバイタリティーと行動力に圧倒された」「『食育』という観点からアプローチするのは、とてもいい方法だと思う」「経営は大変そうだけど新鮮な考え方でとても楽しそう」といった共感とともに、「私には何ができるかわからないけど関わりたい」という積極的な声もありました。


未来を語り合う


 その後、江別市内の宿泊施設に移動し、医学生が企画したゲームで交流を深め、将来のことなどを夜まで語り合いました。
 参加者は2つの企画を通じて、「出産や育児にかかる費用や貧困事例を知り、性教育やさまざまな制度を整備する必要性を感じた」「貧困は金銭面の問題だけでなく、教育や文化などが複雑に絡んでいることを知り、とても奥深い問題だと思った」「講演を聞くだけでなく、実際にレストランに行って考えることができて、とても身になりました」 などの感想が寄せられました。

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