ムーヴメント

介護の未来のため 無罪を勝ち取ろう

2019年8月8日

理不尽な判決 許せない
あずみの里裁判全道学習会

講演する山崎弁護士

 2013年、長野民医連の特別養護老人ホーム「あずみの里」の入所者がおやつの時間に意識を失い、亡くなりました。この時介助していた山口けさえ准看護師が「業務上過失致死」で起訴され、松本地裁は今年3月25日、不当にも罰金20万円の有罪判決を下しました。弁護側は控訴し、今後東京高裁で裁判がおこなわれます。この裁判についての全道学習会が7月27日、札幌市内でおこなわれ73人が参加しました。長野中央法律事務所の山崎泰正弁護士が講演し、当時の状況と裁判の経過を説明しました。
 

事故の状況


 事故が発生したのは入所者のKさんを含めた17人が3時のおやつを食べていた時です。通常は2人の職員で介助しますが、手が足りないため山口さんが介助を手伝いました。山口さんが全介助のOさんとKさんの間に座ってOさんを介助していたときに、他の職員がぐったりしているKさんに気づきました。Kさんは病院に救急搬送されましたが、低酸素脳症などにより1ヶ月後に亡くなりました。それから約1年後、突然、山口さんは刑事被告として在宅起訴されました。


裁判で崩れる検察側の主張


 山崎弁護士は、裁判で問われている罪について次のように説明しました。
 当初の検察側の起訴理由は、他の利用者さんへの食事介助に気をとられ、Kさんの食事中の動静を注視しないままKさんを放置した「注視義務違反」だけでした。しかし裁判の中で弁護側が「山口さんが全介助のOさんの対応をしていたのであり、背後にいるKさんについての注視義務がない」ことを明らかにしました。検察側は通常あり得ない訴因を2度変更し、ゼリーではなくドーナツを食べさせたため窒息したと「おやつ形態確認義務違反」を主張。これについても弁護側は、Kさんは食事も普通食を食べていたこと、嚥下障害はなかったことを明らかにしました。


裁判所が不当な判決


 松本地裁の判決は、①被害者は食物を噛み砕く能力に問題があった、②ドーナツで被害者が窒息する可能性がある、③事故後の救命措置中に呼気があったことは被害者が窒息していたことと整合する、④脳梗塞等、窒息以外が原因である可能性は極めて低い、として「注視義務違反」は認めなかったもののドーナツによる窒息が原因として「形態確認義務違反」で有罪としました。

誰も介護を続け
られなくなる
 山崎弁護士は、詳細に調べた結果として亡くなった理由は本当に窒息なのか疑問としたうえで「判決は少ない介護者で毎日綱渡りのように仕事をしている介護現場をまったく考慮してない。この事故で個人が有罪なら、誰も介護の仕事を続けなくなる。この判決には日本の介護の未来がかかっている。控訴審での無罪を勝ちとろう」と訴えました。


現場からも怒りの声


 2つの現場から報告がおこなわれました。老健柏ヶ丘・介護長の五十嵐修平さんは、当事者の山口准看護師から話を聞いた職員の声を紹介。不当な裁判に怒りがこみ上げると同時に、山口さんから「全国の方からの応援が支え」と話していたことが職場で報告されると、「私たちにもできることを」とさっそく檄布を作成。定期的に学習会を開き、自分が当事者ならどうするかを考え議論してきたとのべ、職員からは「介護への集中を、『気をとられていた』と表現されたら納得がいかない」「他人ごとじゃない。いつのまにか犯罪者にされるのは怖い」と意見が寄せられたことなどを紹介しました。
 特養もなみの里・副施設長の岩佐雅寿さんは、昨年2月に被告人質問の公判を傍聴し、自分たちの職場ならと想像して「個人に業務上の過失責任が問われたことに違和感と恐怖をおぼえた」とのべ、誤嚥のおそれがある人には食事制限や、経口摂取の維持は早い段階で止めるなど影響を心配しました。「転倒リスクの高い利用者を受け入れない事業所もでてくる。胃ろうの早期導入につながる可能性もある」と指摘。「介護現場の職員は、利用者さんができることを考え、関わることがやりがい。それができなくなると悲しい。今回の判決はそれほど影響がある。無罪を勝ちとるために行動しよう」と呼びかけました。


8月まで2万筆を


 閉会あいさつで札幌東社福北在宅センター・センター長の遠藤彰(道民医連理事)さんは、介護の未来がかかる控訴審で必ず勝利するために、不当判決の内容を知らせながら8月22日までに署名2万筆を集めようと呼びかけました(8月30日東京高裁へ署名提出)。
 参加者からは「介護や医療にかかわっているが他人事とは思えない。無罪のために頑張りたい」「実際を知って理不尽な判決は許せない思い」「このとりくみを多くの人に知らせたい」などの感想が寄せらました。
(渋谷真樹・県連事務局)

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