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聴覚障害者の思いを繋ぐ

2020年8月14日

聴覚障害者の思いを繋ぐ
道北勤医協 龍耳友の会

聴覚障害者の思いを繋ぐ
道北勤医協 龍耳友の会

 全道各地の友の会の活動やトピックスを連載でお伝えします。初回は、道北勤医協の聴覚障害者とボランティアでつくる「龍耳(たつみ)友の会」。会員の思いを紹介します。(西村伊久夫・県連事務局)


働きながら手話覚え


 道北勤医協一条通病院で放射線技師をしている広瀬祐則さんは、生まれつき左耳が聞こえません。18年前、右耳も聞こえにくくなり手術をしました。仕事を辞めることを考えましたが、北海道ろうあ連盟幹事の鈴木雅彦さんに「難聴者で働いている人もたくさんいる。手話を習っては」と勧められました。職場の仲間からの励ましもあり、手話を覚えて今も働き続けています。


友の会を結成


 道北勤医協は、市のろうあ協会から依頼を受けて集団健診を実施していたこともあり、聴覚障害をもつ友の会員が多くいました。しかし、地域友の会行事に誘おうとしても連絡がとれなないため、行事に参加する人はほとんどいませんでした。「聴覚障害者にも必要な情報を届けたい」と、友の会員から声が寄せられたこともあり、13年前に聴覚障害者とボランティアで「龍耳友の会」を結成。鈴木さんが会長になり、広瀬さんが事務局長を担うことになりました。現在は約30人。毎年、医療講演会などにとりくんでいます。
 広瀬さんは、「テレビの字幕放送やSNSがあり、以前よりもコミュニケーションがとりやすくなっています」といいます。その一方で、「災害時に必要な情報や、新型コロナウイルスの情報はなかなか入ってきません」と指摘します。


直接思いを伝えたい


 今年2月、聴覚障害をもつAさんは咳が止まらなくなり、命の危険を感じるほど呼吸が苦しくなりました。入院しましたが、手話通訳者は感染リスクがあるため付き添うことができず、苦しい中で筆談と身振りでコミュニケーションをとらなければなりませんでした。Aさんは幸い、コロナは陰性でしたが、聴覚障害者たちは、一人でも多くの医療従事者に手話を覚えてほしいと願っています。
 鈴木さんは、「通院に付き添う手話通訳者に知られたくないこともあります。医師や看護師さんに直接思いを伝えられるといいですね」と話します。


手話にない新語も


 また、手話通訳をしている秋葉多美恵さんは、「新しい言葉、例えば『アベノマスク』はどのようなものか、『GOTOトラベル』はどう表現したらいいか難しい。検査結果の『陰性』『陽性』は、『マイナス』『プラス』と表現しますが、普段から使っていない言葉なのでなかなか通じません」と話します。
 広瀬さんは、「病院やさまざまな施設、避難所などで、重い障害がある人も安心できるように対応してほしい。そのためにも私たちはとりくんでいきます」と前を向きます。

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